日記

統合失調症とちょっとアートの備忘録。

専門性について

精神科医のkyupin先生のブログをよく読んでいる。
過去記事に「専門性について」というのがあった。

https://ameblo.jp/kyupin/entry-10017162421.html



一部抜粋
「さて、医学生が卒業して精神科に入ってしまうと、
なんとなくテンポが精神科になってしまうのでツブシがきかなくなる。
だから、そういうことを心配する人は最初に2〜3年内科に入局し、
それから精神科に来ようとする。
実は、その方法は良くないのである。
精神科の診断、治療には独特の感覚があり、
これは最初から精神科に来ないと身につかない。
何が違うかと言われても、うまく説明できない。
卒業後、最初に他の科で診療しているのが傷になってしまう感じなのである。
だから僕の大学の医局では、
特に助教授が最初から精神科に来なさいとアドバイスしていたらしい。(同期の友人がそう言っていた)
僕は最初から他科に行き勉強しようなどとは思わなかったのでそんな質問はしなかった。
僕はこのようなセンスは診断の時に影響するような気がしている。
心理学的要因と生物学的要因の評価というか、バランスをとり診断する面で少し違うのである。」



これはよくわかる気がする。
若い時期に「最初に」身に着けた専門性というのは尾を引く。



以前、子宮頸がんの検査で引っかかって、
子宮頸がんとはなんぞや?と思って、解説本を読んでいた。
統合失調症になって少し経っていたから、
統合失調症の本は何冊か読んでいた。
病気は病気でも、統合失調症と子宮頚がんの解説本では随分様子が違うもんだなあ、と思った。
私の感覚でいうと、
精神科の本は、国語の授業っぽく、
婦人科の本は、生物の授業っぽい。
科によって違うんだなあ、と思った。




私は、精神科クリニックをいくつか変えている。
今までかかったクリニックは以下の通りだ。


・入院した精神科単科病院
・大学近くの個人クリニック(おじいちゃん先生)
・実家近くの大学病院の精神科(女性の先生)
・結婚して引っ越した先の近くの婦人科・精神科を診る個人クリニック(男性の先生)
・医者が複数人勤務している個人開業のメンタルクリニック(数回のみ)(私の担当は男性の先生)
・大学病院の精神科(出産のため、産科もある大きな大学病院に移った)(男性の先生)


この中で、4番目の婦人科と精神科の見れる医者は、あきらかに毛色が違う、と最初の受診から思った。
(ちなみにこの記事に書いた、相性の悪かった医者である。
http://d.hatena.ne.jp/unaao/20180624/1529842679


この医師は、産婦人科の研鑽を積んだあと、
産婦人科の患者に精神的なケアが必要なことを感じ、精神科に転科したと、雑誌で読んだ。
そして今は婦人科と精神科を両方診るクリニックを開業している。



この先生にお世話になっていて文句を言うのも悪いが、
最初はよかったものの、だんだん違和感が増大し、限界になり、クリニックを変えることにした。
違和感をどう説明すればいいか、なんとも難しいが、
最初の専門が産婦人科なので、もしかして、精神科の診療は劣っているのではないか、
間違いがあるのではないか、という疑念が大きくなってしまった。
普段の診療で何事もなければそんなことは思わなかったのだろうが、
診察の中でちょっとした違和感があり、それが積み重なった感じである。




患者の身分で、医師の専門性について文句を言っていても悪いので、
自分の専門である、絵画について書く。



ギャラリーや美術館で絵を見ていて、
この人の絵は〇〇美術大学っぽいなあ、この人は〇〇芸術大学っぽい、と思うことがある。
経歴をみるとだいたい当たっている。



また、日本画、洋画、彫刻科、デザイン科、などの科による違いもある。
デッサンなどを見るとその違いは如実に表れる。
彫刻のデッサンと、日本画の人の描くデッサンは全然違うのである。



そもそも受験のときに、美術受験予備校で
科による違いは出来上がってしまうし、
〇〇大学用の作風、というのもわざと作り上げる。
受験対策だ。


なにがどう違うかというのは、説明できなくもないのだけど、
すごくめんどくさいのでここでは割愛する。


同じ絵を描くでも、
ずっと絵画をやってきた人と、イラストから絵画に移行した人というのは違いが出る。
グラフィックデザインから絵画でも、絵画から彫刻でも、
成功を収めた人はいるし、移行することは全然構わないのだが、
違いは絶対現れる。それが良いとか悪いとか言ってるのではなく、
違いがあるというだけだ。


学生の頃、言語学の世界的にエライ人の本を読んでいた。
言語学に興味があって手にとったのだが、
基礎知識が無い私には歯が立たず、読破できなかった。
しかし、印象に残ったエピソードがひとつあった。
言語学の研究をするためには、
必要な学問の専門性を20歳までにすべて身につけておかなければならない、というのだ。
必要な学問がなんだったか、思い出せないが、
この話は20歳までに、というのがミソだと思う。
若い時期に身につけた専門性というのは、のちのちまで尾を引く。
何か専門を身につけて歳をとったあと
別の専門を身につけるのは、きっとできなくはないんだろうけど
先に身につけた専門が影響すると思う。
まあ、言語学の大家になるような天才が言う事なので、万人に当てはめなくても良い。
凡人は一つの専門性を身に着けるだけで精一杯である。


私個人で言っても、
洋画出身だから、そういう描き方が身についてしまっていて、
テーマは日本画に近いし、日本画のテクスチャが大好きなんだけど
日本画に転向するのはやめようと思っている。
とりあえず発表するものに関しては。



こんなこと考えているのも、
精神科クリニックを渡り歩いてきたからであって、
最初の受診で、あれ、毛色が違うぞ、と思えるほど、
精神科に精通してしまったのが少し悲しい。